男性の不妊について
男性不妊症には、自然妊娠するのに精子の生成が不足している場合や、性機能障害などによって十分な精子を放出できない場合などがあります。
これらの原因となる既往症として、幼少期に発症しうる停留精巣や精索捻転、成人後に罹患しうる糖尿病や脊髄損傷、性感染症、精巣上体炎、ムンプス精巣炎のほか、癌治療として抗がん剤や放射線治療を行った場合などがあげられます。
また鼠径ヘルニアの手術や、避妊手術での精管結紮(パイプカット)を受けた場合、精巣癌などで後腹膜リンパ節郭清を行った場合なども、不妊原因となります。
薬物では、抗男性ホルモン作用のある胃薬や抗うつ剤、抗精神病治療薬なども精液所見に影響を及ぼします。
最近では、喫煙も不妊原因につながる事が分かっており、妊娠のためには男性の禁煙も望ましいと言われています。
男性不妊症は、以下のように分類する事ができます。
無精子症 | 精液検査によって精子が確認できない |
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乏精子症 | 精液中に精子が少ない |
精子無力症 | 精子の動きが悪い |
乏精子症、精子無力症は、精索静脈瘤が原因疾患となっている場合もあります。
膿精液症 | 精液が感染している この場合には抗生物質を内服してもらう治療を行います。 |
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性機能障害 | 勃起しない 基礎疾患などがない場合は、内服薬などによって改善する事もあります。当院では、男性への処方も可能です。 |
射精障害 | 精液が出ない、腟内射精が出来ない この場合には人工授精を行い、子宮内に精子を注入する事などの治療を行います。 |
原因として頻度の高い「無精子症」とは
無精子症には、閉塞性無精子症と非閉塞性無精子症があります。
これらの識別には、触診による精巣容積の診察、精管や精索静脈瘤の診断のほかに、採血によるFSH、男性ホルモン(テストステロン)の値を調べます。FSHは脳にある下垂体前葉から分泌される性腺刺激ホルモンであり、女性では卵胞形成を促進します。男性の場合にも、精子形成と関係していることが分かっており、FSH値は二つの疾患を鑑別する際に参考になります。
【閉塞性無精子症とは】
精巣での精子形成は正常ですが、精子が排出される経路に閉塞や欠損があって、精子が精液中に認められません。
男性不妊症は、以下のように分類する事ができます。
原因 | 精管結紮(パイプカット)、鼠径ヘルニア手術、射精管閉塞、精巣あるいは精巣状態レベルでの閉塞、先天性両側精管欠損が考えられます。 |
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治療 | 精巣内精子採取術を行った場合に、精子を得られる可能性がとても高いです。 |
【非閉塞性無精子症とは】
精巣での精子形成が不良のために、精子が認められない状態です。
原因 | 先天的な疾患(クラインフェルター症候群や原発性精巣機能不全症)と、抗がん剤や放射線治療、ムンプス精巣炎などによる後天的なものが挙げられます。 |
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治療 | 精巣内精子採取術(TESE)を行い、精子が得られた場合には顕微授精を行う事が可能ですが、先天的にY染色体の微小欠損がある場合は、欠損部位によって全く精子を獲得できないこともあります。現在では、男性が持っているY染色体について染色体検査をする事も可能となりました。 |
精巣内精子採取術(TESE)
無精子症の場合には、Needle TESEとMD-TESEどちらかの手術が適切か、採血によるFSHの値の確認や、精巣容量を診察し手術の方法をご提案しています。
1. Needle TESE
閉塞性無精子症が疑われる場合に、局所麻酔で精巣に針を穿刺し、精子を得る方法です。日帰り手術が可能で、手術後の腫脹などの影響を考え、施行は片側のみに行います。
2. MD-TESE
非閉塞性無精子症が疑われる場合に行う手術です。脊椎麻酔または全身麻酔を必要とするため、2泊3日程度の入院が必要となります。両側精巣に施行する事ができ、Needle TESEの方法で精子が得られなかった場合にも精子が得られる可能性が高くなり、術後の血腫形成などの頻度も少ないと言われています。
精索静脈瘤とは
精索静脈瘤は男性不妊症の4割に認められる疾患で、精巣静脈が逆流しているために、血液が精巣周囲に停滞し陰嚢の温度が上昇してしまう疾患です。90%は左側の精巣に発症し、精子数が減少したり、精子運動率が低下するなどします。治療としては、精巣静脈を手術ですべて結紮・切断します。治療による精液改善所見は、70%前後で、妊娠率は40−50%と言われています。最近の臨床研究では、手術を受けた場合の1年後の妊娠率が手術群で60%、非手術群で10%というデータも発表されました。手術を受けた場合でも、妊娠例の約半数は体外受精や顕微授精などのARTによって妊娠に至っているのも現状です。
当院では
ART(生殖補助医療)技術の発展、顕微授精の技術の向上によって、極論としては1匹でも精子が獲得できれば妊娠が可能な時代となりました。当院では、男性不妊の患者さまの場合、泌尿器科の生殖医療専門医に診察を受けていただく事が可能です。