AMH(アンチミュラー管ホルモン)

AMHは前胞状卵胞から分泌され、残存する卵胞の数を推測できる。
女性の卵巣予備能を知る指標となる。

アロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール)

エストロゲンの生成を阻害し、視床下部に作用して下垂体から卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を増加させて、卵巣での成熟を促す。無排卵症やPCO(多嚢胞性卵巣)の場合に使用することで排卵誘発ができる。また、クロミッドのように抗エストロゲン作用がなく、頚管粘液や内膜に悪影響を及ぼさない。クロミッド抵抗性の難治性無排卵症でも有効な場合がある。

アシステッド・ハッチング(AHA)

透明帯が厚い受精卵(胚)を着床しやすくする為に、透明帯を菲薄または開孔してふ化を促進する技術。

一般不妊治療

タイミング指導から人工授精までを一般不妊治療、体外受精や顕微授精など、より高度な治療を生殖補助技術と区分けしている。

異所性妊娠(子宮外妊娠)

受精卵が子宮内腔以外の場所に着床して成育した状態をいう。胎児の育つスペースがないので、流産や出血を起こすことがある。このため、異所性妊娠の可能性のあるときには、早く診断を受けて手術や薬物治療をすることが必要。着床部位により卵管妊娠、頚管妊娠、卵巣妊娠、腹膜妊娠に分類されるが、多くは卵管妊娠である。

エッグドネイション(卵子提供)

手術によって卵巣を喪失した人や、早期に閉経に至る人(POF)が他人から卵子を提供してもらい、夫の精子で体外受精し、受精卵を妻の子宮に移植する方法。

黄体機能不全

高温期が10日間以内、血中プロゲステロン(P4)10ng/ml以下。日付診のズレなどで黄体期の機能が充分働いていない状態を診断する。

黄体期

排卵から次の月経までの期間で、黄体ホルモンが分泌され、基礎体温は高温期を示す。

黄体化ホルモン(LH)

卵胞の成熟・排卵・黄体形成を促すホルモン。脳下垂体から分泌されるホルモンで、卵胞刺激ホルモン(FSH)と協力して働き、排卵が近づくと急激に大量の黄体化ホルモンを放出して(LHサージ)、排卵の直接的な引き金となる。

黄体化非破裂卵胞(LUF)

基礎体温上2相性の排卵パターンを示すが、実際は卵巣内で排卵されて卵胞が黄体化する。卵管に卵子が捕捉されない状態。

カベルゴリン

高プロラクチン血症により排卵障害の治療に使われる。高プロラクチン血症は、妊娠・出産していない状態でもプロラクチンの濃度が高くなってしまうもので、黄体機能不全が起こったり排卵を止める働きがあるので不妊の原因になってしまうことがある。カベルゴリンを服用することでプロラクチンの分泌を調整する。作用持続時間が長く、24時間安定した血中濃度を保つことができるので、週1回または10日に1回に1錠の服用で効果が期待できる。また、母乳の分泌を抑制する作用があるため断乳を希望する際にも処方されることがある。

下垂体

視床下部から刺激を受けて、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)の2種類の性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)や乳汁分泌ホルモン(プロラクチン)を分泌するほか、他の多くのホルモン分泌調節の中枢の役割も果たす。

機能性卵巣アンドロゲン過剰症(FOH)

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の本態。PCOS/FOHと併記される傾向にある。病態としては、卵巣内の男性ホルモンが上昇する結果、卵胞の発育遅延や早期に卵胞が閉鎖され排卵障害を起こす。メトホルミンの内服で卵胞内の男性ホルモンを低下させ、良好卵が得られる。

基礎体温表(BBT)

起床後、婦人体温計で測った体温を表にしたもの。排卵後、基礎体温が上昇する二相性の特徴をもとに排卵の有無を予測できる。

クロミッド

排卵誘発剤。視床下部で卵巣から出ている卵胞ホルモン(エストロゲン)の作用を抑え、下垂体から出る卵胞刺激ホルモン(FSH)を増やして、排卵を促す働きがある。クロミッドの単独療法やhMG、hCGなど他の薬剤と併用する場合がある。

クラミジア感染

性感染症(STD)の一つで、卵管因子としての不妊の原因になる。抗生物質で比較的容易に治療することができる。

顕微授精(ICSI:卵細胞質内精子注入法)

顕微鏡下で精子を直接卵子の中に一個注入して受精させる方法。精子減少症、精子無力症、受精障害などの男性不妊の場合に用いられることが多い。体外受精の一つ。

原発性不妊

妊娠歴のない不妊症をいう。

血中ホルモン値

月経をつかさどるホルモンは一つではなく、複数のホルモンが関与している。ホルモン値は、血液で調べることができる。

  • FSH
    卵胞刺激ホルモン。脳下垂体から分泌さ れ、卵胞の成長を促す。女性では排卵障害、男性では精巣機能障害を調べる。正常値(生理2日目)8~12IU/ml以下。
  • LH
    黄体化ホルモン。女性では、排卵を起こし黄体ホルモンを分泌させ黄体期(高温期)を維持する作用がある。男性では、男性ホルモンを分泌させる作用がある。正常値10mIU/ml以下。
  • P4
    プロゲステロン。黄体ホルモン。排卵後の卵胞の顆粒膜細胞が黄体細胞となり分泌するホルモン。内膜を着床可能な状態にする。正常値(黄体期)10ng/ml以上。
  • E2
    エストラジオール。エストロゲンの一種で、卵胞の成熟によってでてくるホルモン。このホルモンの測定によって、卵胞の発育、内膜の厚さ、頚管粘液などの状態を予測できる。
  • PRL
     乳腺刺激ホルモン(プロラクチン)。乳汁を分泌させるホルモンで、本来は分娩後授乳している時に分泌される。妊娠を望む女性にプロラクチンの異常分泌が起こると、月経不順や排卵障害、黄体機能不全、流産の原因となる。正常値13~15ng/ml以下。

頚管粘液検査

排卵が近づくとエストロゲンの作用により、子宮頚管で頚管粘液が分泌される。頚管粘液は精子をスムーズに子宮内に侵入させる働きがある一方、精子の一時的貯蔵の働きもあり、その性状を調べる検査。排卵前になると粘液の量が急激に増え、妊娠しやすい状況をつくるため、その頚管粘液を採取することで排卵の予測をすることができる。

コースティング(coasting)法

卵胞誘発の過程で、多数の卵胞ができて血中ホルモンE2値が上昇した場合OHSSになる危険を回避するため、一時的にhMGの注射を中止し、卵胞が一部閉鎖して血中ホルモンE2値が3,000ぐらいに下がってから採卵をする方法。

抗精子抗体検査

精子に対して一種のアレルギー反応をおこして、精子を動かなくしてしまう精子不動化抗体を調べる検査。

ショート法(Shortプロトコール)

体外受精の排卵誘発のための卵巣刺激法。GnRHアナログ(スプレキュア・ナサニール・イトレリン)を月経開始時より使用し、月経3日目ごろからhMGを使用する。フレア現象を利用しながらhMGを使うことで、複数の成熟卵胞を作ることを目的としている。

出生前診断(NIPT)

妊娠成立後、血液検査や絨毛、羊水にて染色体の検査を行う。診断方法には超音波検査、母体血清マーカー(クアトロテスト)、母体血胎児染色体検査(NIPT)、羊水染色体検査がある。NIPTでは13、18、21番染色体のトリソミーを発見することができる。

人工授精(IUI)

排卵時期に、人工的に精子を直接子宮内に注入する方法。精子はスイムアップ法やパーコール法で、良好な運動精子を選別したり、濃縮したりして使用する。人工授精には、夫の精子を使用する「配偶者間人工授精(IUI-H)」と、精子提供者の精子を使って行う「非配偶者間人工授精(IUI-D)」がある。IUI-Dは、夫が無精子症あるいは精子に遺伝的疾患があるときに実施される。日本では、限られた病院でのみ行われている。

シクロフェニル(薬剤名:セキソビット)

経口の排卵誘発剤。副作用は少ないが、排卵誘発効果も弱い。

子宮内膜症

子宮腔をおおう粘膜組織を子宮内膜という。それが何らかの原因で、子宮の内側だけではなくほかの場所へ飛んだり、入り込んだりして子宮内膜と同じ働きをするのが子宮内膜症。月経痛、性交痛、排便痛等の症状がある。卵管に病変が及ぶと不妊の原因の一つと考えられている。子宮の筋層に入り込んだ場合を「子宮腺筋症」、卵巣にできた場合を「チョコレート嚢胞」という。

子宮内膜ポリープ

内膜の限局性増殖をいい、発生部位・大きさによっては着床の妨げになる。微小内膜ポリープは、薬物療法で治療する必要がある。

子宮筋腫

子宮にできる瘤状の良性腫瘍。筋腫ができる場所によって漿膜下筋腫(子宮の外側にできるもの)、粘膜下筋腫(子宮内膜の下にできるもの)、筋層内筋腫(子宮の筋層にできるもの)と呼ばれている。これらの中で不妊の原因となるのは粘膜下筋腫である。

子宮鏡下選択的子宮卵管造影

子宮卵管造影にて卵管閉塞が疑われる場合、子宮鏡下にて卵管口へカテーテルを挿入し、造影しながら卵管の通過性を確認する。

子宮卵管造影検査(HSG)

造影剤を子宮頚管の入り口から、注入して卵管の通過性、子宮腔や卵管の形、卵管采周囲癒着の程度を知ることができる。レントゲン撮影検査。

子宮鏡

ヒステロスコピーともいい、子宮頚部から内視鏡を入れて子宮腔内を肉眼的に観察する検査。子宮内膜ポリープ、粘膜下筋腫や子宮腔内の癒着(アッシャーマン)が発見できる。

性交後試験(フーナーテスト) 

排卵日前後に性交してもらい、性交後3~5時間後くらいで、頚管及び子宮内へ精子が入っているか否かを調べる検査。

精索静脈瘤

精巣静脈が逆流し、静脈血が停滞し陰嚢温度が上昇、その結果精子数が減少したり、精子運動率が低下する。男性不妊の約4割に認められ90%は左側に出現する。治療による精液所見の改善は約70%と言われている。

精液検査

一定の禁欲期間(3~5日間)をおいたあと、マスターベーションで採取した精液の精子濃度、運動率、奇形率などを調べる。精液の状態は体調やストレスなどによって変動するので2~3回検査を行う。

  • 精子の正常値
    精液量 1.5ml以上、
    精子濃度 1500万/ml以上、
    運動率40%以上、
    前進運動率 32%以上、
    正常形態率 4%以上、
    白血球濃度 100万/ml未満(WHO2010基準)
  • 精子減少症
    精液中の精子の数が少ないこと。精液1ml中の精子の数が1500~2000万以下
  • 精子無力症
    精子運動率が40%未満、または直進する精子が32%未満をいう。
  • 膿精液症
    クラミジア感染などにより、精路のどこかに炎症を起こし白血球が増殖し精液が感染している状態。抗生物質にて治療する

続発性不妊

妊娠、出産歴はあるものの、その後妊娠を望んでも妊娠に至らないことをいう。

早発卵巣不全(POF)

40才以前に、卵胞が消失し閉経する病気。

タイムラプス

インキュベーター内の胚の写真を一定間隔で連続撮影して、胚の発育を動画のように見る技術。胚を取り出さずに観察を行えるため、培養環境の改善ができる。また、従来の培養方法では分からなかった卵割の状態を観察できる。異常な分割をする胚は、胚盤胞発育率や妊娠率が低いと報告されている。

タイミング指導

排卵を予測して、性交タイミングを指導する方法。排卵の予測には基礎体温、超音波検査による卵胞径の計測、血中・尿中の黄体化ホルモン(LH)値などを調べる。排卵2~3日前の性交がより受精率を高めるといわれる。
排卵誘発剤を併用することも多い。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

超音波検査にて多数の小卵胞を示し、LH高値、AMH高値で、血中男性ホルモンが高く、排卵障害を認める。症例により、クロミッド、アロマターゼ阻害剤、hMGなどの排卵誘発剤を使用し、排卵改善を図る。難治性の場合には、腹腔鏡による卵巣多孔術を検討したり、体外受精の適応となる。

代理出産

何らかの原因で卵巣や子宮がなく、自分で妊娠することが不可能な場合に他の女性に出産してもらうこと。代理出産には2種類ある。

  • ホストマザー
    夫婦の受精卵を他の女性の子宮に移植し出産すること。
  • サロゲートマザー
    夫の精子を他の女性に人工授精して出産すること。

体外培養-体外受精(IVM-IVF)

スプレキュアやhMGを使用せず、自然周期の7~10日目で直径7~10mmの卵胞を吸引し、未熟な卵を体外で受精可能なまでに培養していく方法。以前、重篤なOHSSを起こした人やPCO(多嚢胞性卵巣)などの症例のOHSS予防として行う方法。

体外受精-胚移植(IVF-ET)

卵子と精子を体外に取り出して受精させ、受精卵(胚)を子宮腔に移植する一連の操作をいう。採卵数を増やす目的で、通常は排卵誘発が行われる。多胎妊娠を予防する為に、原則良好発育胚1個を移植する。なかなか妊娠しない場合には、2個移植を選択することもある。

チラージン

甲状腺ホルモン剤で潜在性甲状腺機能低下症や橋本病(甲状腺自己抗体陽性)に甲状腺ホルモン補充療法剤として使用される。甲状腺機能低下は流産の軽減や、児の発育障害や知能発育に影響するため妊娠前・妊娠初期はチラージンを服用しTSH(甲状腺刺激ホルモン)を2.5μU/ml以下に維持することが妊娠に関するガイドラインですすめられている。

超音波検査

周波数の高い音波を臓器に発信してその反射波をコンピューターで画像化する医療機器を使って調べる検査。卵胞の成長、排卵時期、内膜の状態など目的によって多用されている。子宮筋腫、卵巣腫瘍などの診断にも用いられる。

着床前診断

胚移植をする前に多くの場合、胚盤胞まで胚を発育させ、胎盤になる栄養外胚葉の細胞を取り出し、遺伝子の異常がないかを調べること。日本での実施には、非常に多くの制約がある。

  • PGS(着床前遺伝子スクリーニング)
    受精卵の染色体の数の異常(異数体)がないかを調べる方法。
  • PGD(着床前遺伝子診断)
    特定の遺伝子異常の有無を診断する。特定遺伝子疾患の素因のある場合が適応となる。

着床

卵管膨大部で受精した受精卵は、分割を繰り返して桑実胚となり、さらに胞胚になって子宮内膜に侵入する。こうして、受精卵と母体の間に生物的な結合が成立した状態を着床という。

帝王切開瘢痕症候群

帝王切開の時に生じた子宮の傷跡(凹み)に月経血が溜まることで、溜まった血液が受精卵の発育や精子が子宮内に進入するのを阻害し、不妊に繋がるのではないかと考えられている。症状として、子宮内に溜まった月経血が徐々に排出されることで、月経後も排卵期にかけて出血が続くことや、月経血の排出障害による生理痛などがあげられる。治療方法は、子宮鏡下や腹腔鏡下での修復術を行う。

低刺激排卵誘発法

従来のGnRHa+hMGの過排卵誘発にかわり、クロミッドやアロマターゼ阻害剤周期に適度のhMGを使用し行う体外受精で、採卵数は少ないがOHSSの発生頻度も低下し良好胚を得られるとされている。時にGnRHアンタゴニストも使用する。

凍結受精卵

受精卵を液体窒素(-196℃)により凍結保存する。体外受精の余剰胚の有効利用やOHSS予防、着床妊娠率の向上のために利用される。凍結胚と同じ意味。凍結法には、一般的に急速法(ガラス化法、Vitrification)が用いられる

二段階胚移植

同一周期に培養2~3日目の4~8細胞期胚と、5~7日目培養の胚盤胞を2回移植する方法で、妊娠の向上が期待されるといわれている。

バイアグラ膣錠

子宮内膜が十分に厚くならない症例や、良好胚を移植しても着床しない症例に使用する。内膜の血流が改善され内膜も厚くなり妊娠率が向上するといわれている。

排卵誘発剤

排卵を促す薬。注射薬にhMG、hCG、経口薬にクロミッド、セキソビットなどがある。卵巣が腫れる、腹水貯留などの副作用もあるので、医師の指示に従うことが必要。

排卵の予測

基礎体温では、低温相最終日か高温相初日が排卵の目安とされているが、基礎体温のみで排卵を特定するのは困難な場合が多い。このため、超音波検査による卵胞径の計測や、血中あるいは尿中の黄体化ホルモン(LH)の測定を補助手段として、排卵を予測することが多い。

胚盤胞移植(後期胚移植)

受精後5~7日間培養し胚盤胞となった胚を移植すること。良好な胚を選別し、移植胚を減らすことにより多胎妊娠の予防になるメリットがあるが、採卵して複数個の受精卵を得たとしても、受精卵のうち胚盤胞まで発育するのは約40%であるため、胚移植できないこともある。しかし、胚盤胞に至った胚の妊娠率は高い。胚の選択を行うことにより移植あたりの妊娠率が高くなる。

胚移植(ET)

体外受精で用いられ、受精卵を母体(子宮)に戻すことを言う。一般には、採卵後受精させ2~3日後に行われる初期胚移植と、症例により5~7日目の胚盤胞まで培養し胚移植する後期胚移植がある。

hMG(ヒト閉経ゴナドトロピン)

排卵誘発剤。閉経後の女性の尿から抽出した製剤で、強力な排卵刺激作用がある。基本的な構成成分は卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)で、その割合は製品によって異なる。

hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)

排卵を促すホルモン。黄体化ホルモン(LH)作用がある。排卵誘発剤や黄体機能賦活剤として注射する。

不育症

妊娠しても胎児が育たず、流産や早産を繰り返して生児が得られない場合を不育症という。出生後1週間以内に死亡する周産期死亡も不育症に含まれる。

  • 抗リン脂質抗体
    細胞膜の自己抗体で、陽性の場合は、不育症の原因となる。
  • ループスアンチコアグラント(LAC)
    全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患に関係し、習慣流産の原因となる。
  • 低用量アスピリン・ヘパリン療法
    不育症の治療。抗凝固系異常、抗リン脂質抗体、自己免疫疾患などによる血液凝固亢進の場合の治療として使用される。

腹腔鏡検査

腹部に小孔をあけ、そこに内視鏡を入れて腹腔内を観察する検査。子宮内膜症病変、卵管、卵巣の形態や周囲の状態の検査ができる。癒着剥離や卵巣嚢腫摘出、子宮筋腫摘出の手術が行われている。身体的な負担が少ない。

不妊症

生殖年齢の男女が、妊娠を希望して、一定期間性生活を行っているにもかかわらず、妊娠しない場合をいう。その一定期間については、1年間と言われる。

腹腔鏡下筋腫核出術(LM)

子宮筋腫の核となる部分のみを手術で取り除き、子宮を温存し妊孕性を保つ手術。腹腔鏡下に手術するのが一般的、漿膜下筋腫、筋層内筋腫が適応となる。

胞状卵胞数(AFC)

経腟超音波で見える2~12㎜の大きさの発育卵胞。

無精子症

精液中に精子が存在しないこと。造精能力が低下している場合(非閉塞性無精子症)と、射精されるまでの過程で精子の輸送が障害されている場合(閉塞性無精子症)がある。

  • 精巣内精子採取術(TESE)
    精巣内の精細管と呼ばれる小さな組織を採取し、その中の精子を採取する方法。
  • needle-TESE
    局所麻酔にて18Gの細い針を使用し、睾丸に数か所穿刺する方法。
  • MD-TESE
    全身麻酔を使用し精巣の皮膚を切開して、顕微鏡で直接精細管から精子を採取する方法。

メトホルミン

糖尿病治療薬の一つ。高インスリン状態では排卵障害を伴うことが多く、PCOS/FOHはその代表疾患である。メトホルミンの内服でインスリン抵抗性を低下させ、セックスホルモン結合グロブリン(SHBG)の生産を増加させたり、直接卵胞に作用したりして男性ホルモンを低下させ良好卵を得ることができる。

卵管鏡下卵管形成術(FT)

カテーテルを経腟的に子宮や卵管に挿入し、カテーテルの風船(バルーン)を膨らませて卵管内に通し、癒着を剥離して通過性を回復させる治療法。

卵胞期

月経から排卵までの期間で卵胞ホルモンが分泌され基礎体温は低温期をしめす。内膜は肥厚、増殖する。

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)

排卵誘発剤によって起きる副作用。卵巣腫大、腹水、乏尿、血液濃縮、血栓など重症化すれば入院が必要。妊娠すると重症化しやすい。

卵子凍結

未成熟あるいは成熟した卵子を凍結保存すること。
若年女性がん患者が生殖細胞への影響を回避し、妊孕性を温存するための医学的適応と、女性が将来の妊娠に備えて凍結保存する社会的適応がある。

流産

妊娠22週未満で、妊娠継続が終結すること。

  • 切迫流産
    下腹痛、出血などの流産兆候があるが妊娠が継続している。
  • 稽留流産
    妊娠嚢が存在するが、胎児および胎児心拍がない状態で、すでに妊娠が中断している。
  • 反復流産
    2回連続で流産すること。
  • 習慣流産
    3回連続で流産すること。

リコンビナントLH製剤

遺伝子組み換え(リコンビナント)技術を用いて製造されたヒトLH製剤。

リコンビナントFSH製剤

遺伝子組み換え(リコンビナント)技術を用いて製造されたヒトFSH製剤。尿を原料としていないので尿に含まれる不純物を含まず、卵胞刺激ホルモンの純度が高い。

レゼクト(TCR)

経頚管的子宮鏡下で内膜ポリープや粘膜下筋腫を 摘出、切除する方法。日帰りでも手術可。

ロング法(Longプロトコール)

体外受精の排卵誘発のための卵巣刺激法。GnRHアナログ(スプレキュア・ナサニール・イトレリン)を前周期の月経高温中期より使用し、hMGを月経3日目ころから使用する誘発方法。確実に自分のホルモンを抑えながら,hMGを使うことにより、複数の均等な成熟卵胞をつくることを目的としている。

A

ART

生殖補助医療技術。体外受精、顕微授精などの先端生殖医療の総称として使われる。

AMH(アンチミュラー管ホルモン)

AMHは前胞状卵胞から分泌され、残存する卵胞の数を推測できる。
女性の卵巣予備能を知る指標となる。

胞状卵胞数(AFC)

経腟超音波で見える2~12㎜の大きさの発育卵胞。

アシステッド・ハッチング(AHA)

透明帯が厚い受精卵(胚)を着床しやすくする為に、透明帯を菲薄または開孔してふ化を促進する技術。

B

基礎体温表(BBT)

起床後、婦人体温計で測った体温を表にしたもの。排卵後、基礎体温が上昇する二相性の特徴をもとに排卵の有無を予測できる。

C

コースティング(coasting)法

卵胞誘発の過程で、多数の卵胞ができて血中ホルモンE2値が上昇した場合OHSSになる危険を回避するため、一時的にhMGの注射を中止し、卵胞が一部閉鎖して血中ホルモンE2値が3,000ぐらいに下がってから採卵をする方法。

D

DHEA

卵巣予備機能が低下した35歳以上の低反応患者を対象とした卵巣機能回復サプリメント。副作用として脱毛、多毛、攻撃的、イライラ感などがある。

E

胚移植(ET)

体外受精で用いられ、受精卵を母体(子宮)に戻すことを言う。一般には、採卵後受精させ2~3日後に行われる初期胚移植と、症例により5~7日目の胚盤胞まで培養し胚移植する後期胚移植がある。

F

卵管鏡下卵管形成術(FT)

カテーテルを経腟的に子宮や卵管に挿入し、カテーテルの風船(バルーン)を膨らませて卵管内に通し、癒着を剥離して通過性を回復させる治療法。

機能性卵巣アンドロゲン過剰症(FOH)

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の本態。PCOS/FOHと併記される傾向にある。病態としては、卵巣内の男性ホルモンが上昇する結果、卵胞の発育遅延や早期に卵胞が閉鎖され排卵障害を起こす。メトホルミンの内服で卵胞内の男性ホルモンを低下させ、良好卵が得られる。

G

GnRHアンタゴニスト法(セトロタイド、ガニレスト)

GnRHアゴニストと異なりフレアアップがなく、卵に対する悪影響が少ない。即効性LHを低下させ、早発LHサージの予防に使用される。自然周期で卵胞期後期に短期間GnRHアンタゴニストを投与することによってLHサージを抑制し、侵襲の少ない低刺激法にも試みられている。FSH、LHの放出阻害剤として、下垂体のレセプターに作用する。作用は短時間である。

GnRHアゴニスト法(スプレキュア、ナサニール、イトレリン)

下垂体のFSH、LHのレセプター(受容体)に結合して一時的にFSH、LHを大量に放出(フレアー現象)し、その後結合力が強く作用が長いためにFSH、LHの分泌抑制(ダウンレギュレーション)を起こす。子宮内膜症の治療や排卵誘発での早発LHサージ抑制での早期排卵阻止に使用し、時には短期、少量で排卵のLHサージの誘発に利用する。

H

HOMA指数

インスリン抵抗性の評価。
空腹時血糖×インスリン÷405で求めることができる。近年の研究でインスリン抵抗性、高インスリン血症などの糖代謝異常が不妊症の排卵障害や不育症、習慣流産に深く関係していることが判明しつつある。

hMG(ヒト閉経ゴナドトロピン)

排卵誘発剤。閉経後の女性の尿から抽出した製剤で、強力な排卵刺激作用がある。基本的な構成成分は卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)で、その割合は製品によって異なる。

hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)

排卵を促すホルモン。黄体化ホルモン(LH)作用がある。排卵誘発剤や黄体機能賦活剤として注射する。

子宮卵管造影検査(HSG)

造影剤を子宮頚管の入り口から、注入して卵管の通過性、子宮腔や卵管の形、卵管采周囲癒着の程度を知ることができる。レントゲン撮影検査。

I

体外培養-体外受精(IVM-IVF)

スプレキュアやhMGを使用せず、自然周期の7~10日目で直径7~10mmの卵胞を吸引し、未熟な卵を体外で受精可能なまでに培養していく方法。以前、重篤なOHSSを起こした人やPCO(多嚢胞性卵巣)などの症例のOHSS予防として行う方法。

体外受精-胚移植(IVF-ET)

卵子と精子を体外に取り出して受精させ、受精卵(胚)を子宮腔に移植する一連の操作をいう。採卵数を増やす目的で、通常は排卵誘発が行われる。多胎妊娠を予防する為に、原則良好発育胚1個を移植する。なかなか妊娠しない場合には、2個移植を選択することもある。

人工授精(IUI)

排卵時期に、人工的に精子を直接子宮内に注入する方法。精子はスイムアップ法やパーコール法で、良好な運動精子を選別したり、濃縮したりして使用する。人工授精には、夫の精子を使用する「配偶者間人工授精(IUI-H)」と、精子提供者の精子を使って行う「非配偶者間人工授精(IUI-D)」がある。IUI-Dは、夫が無精子症あるいは精子に遺伝的疾患があるときに実施される。日本では、限られた病院でのみ行われている。

顕微授精(ICSI:卵細胞質内精子注入法)

顕微鏡下で精子を直接卵子の中に一個注入して受精させる方法。精子減少症、精子無力症、受精障害などの男性不妊の場合に用いられることが多い。体外受精の一つ。

L

LH-RH

間脳下垂体を刺激する放出因子。下垂体機能検査や排卵誘発剤として用いられる。

LHカラー(尿中)

排卵時にLHホルモンが放出(LHサージ)されることから、尿テストで排卵日を推定できる。

ロング法(Longプロトコール)

体外受精の排卵誘発のための卵巣刺激法。GnRHアナログ(スプレキュア・ナサニール・イトレリン)を前周期の月経高温中期より使用し、hMGを月経3日目ころから使用する誘発方法。確実に自分のホルモンを抑えながら,hMGを使うことにより、複数の均等な成熟卵胞をつくることを目的としている。

腹腔鏡下筋腫核出術(LM)

子宮筋腫の核となる部分のみを手術で取り除き、子宮を温存し妊孕性を保つ手術。腹腔鏡下に手術するのが一般的、漿膜下筋腫、筋層内筋腫が適応となる。

黄体化ホルモン(LH)

卵胞の成熟・排卵・黄体形成を促すホルモン。脳下垂体から分泌されるホルモンで、卵胞刺激ホルモン(FSH)と協力して働き、排卵が近づくと急激に大量の黄体化ホルモンを放出して(LHサージ)、排卵の直接的な引き金となる。

黄体化非破裂卵胞(LUF)

基礎体温上2相性の排卵パターンを示すが、実際は卵巣内で排卵されて卵胞が黄体化する。卵管に卵子が捕捉されない状態。

M

MRI

磁気共鳴画像診断装置。磁気を使用し身体の断層写真を撮影する検査機器。婦人科においては、子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣腫瘍などの診断に役に立つ。

N

出生前診断(NIPT)

妊娠成立後、血液検査や絨毛、羊水にて染色体の検査を行う。診断方法には超音波検査、母体血清マーカー(クアトロテスト)、母体血胎児染色体検査(NIPT)、羊水染色体検査がある。NIPTでは13、18、21番染色体のトリソミーを発見することができる。

O

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)

排卵誘発剤によって起きる副作用。卵巣腫大、腹水、乏尿、血液濃縮、血栓など重症化すれば入院が必要。妊娠すると重症化しやすい。

P

着床前診断

胚移植をする前に多くの場合、胚盤胞まで胚を発育させ、胎盤になる栄養外胚葉の細胞を取り出し、遺伝子の異常がないかを調べること。日本での実施には、非常に多くの制約がある。

  • PGS(着床前遺伝子スクリーニング)
    受精卵の染色体の数の異常(異数体)がないかを調べる方法。
  • PGD(着床前遺伝子診断)
    特定の遺伝子異常の有無を診断する。特定遺伝子疾患の素因のある場合が適応となる。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

超音波検査にて多数の小卵胞を示し、LH高値、AMH高値で、血中男性ホルモンが高く、排卵障害を認める。症例により、クロミッド、アロマターゼ阻害剤、hMGなどの排卵誘発剤を使用し、排卵改善を図る。難治性の場合には、腹腔鏡による卵巣多孔術を検討したり、体外受精の適応となる。

早発卵巣不全(POF)

40才以前に、卵胞が消失し閉経する病気。

S

ショート法(Shortプロトコール)

体外受精の排卵誘発のための卵巣刺激法。GnRHアナログ(スプレキュア・ナサニール・イトレリン)を月経開始時より使用し、月経3日目ごろからhMGを使用する。フレア現象を利用しながらhMGを使うことで、複数の成熟卵胞を作ることを目的としている。

T

レゼクト(TCR)

経頚管的子宮鏡下で内膜ポリープや粘膜下筋腫を 摘出、切除する方法。日帰りでも手術可。

V

Vitrification(ガラス化)法

胚、卵子凍結法の種類で、超急速凍結法のこと。従来から広く用いられている緩慢凍結法に対し短時間で行うことができ、また、細胞内氷晶(これにより細胞はダメージを受ける)による障害が少ないとされている。高い生存率と再現性を有する可能性を持つ凍結保存法。