Gn―RH(LH―RH)とは、視床下部から分泌されて脳下垂体を刺激するホルモンですが、このホルモンの化学構造を変えることにより、元のGn―RHと同じ効果とそれに加えて違う効果をもった新しい化合物を作ることができます。それがGn―RHアナログと呼ばれるものです。Gn―RHアナログにはGn―RHアゴニストと―RHアンタゴニストの2種類があります。Gn―RHアゴニストの商品名には鼻から吸入するスプレキュア・イトレリン・ナサニール、注射薬にはリュープリン・ゾラデックス等があります。
Gn―RHアゴニストを投与すると、まず最初に脳下垂体が刺激されますが、何日か続けて使っているうちに今度は脳下垂体が無反応状態となり、天然のGn―RHにも反応しなくなります。その結果、脳下垂体からのFSHやLHの分泌は低下します。LHサージも抑えますので自然排卵もなくなります。そして、HMGやFSHの注射で卵胞発育をコントロールできるようになるので、体外受精の時の卵巣刺激と併用してよく用いられます。なお、これらのGn―RHアゴニストは保険上では子宮内膜症や子宮筋腫に用いられるものです。すなわち、4ヶ月から6ヶ月間月経を止めて病巣を萎縮させます。スプレキュア・イトレリンは1日3回左右の鼻腔から、ナサニールは1日2回片側の鼻腔から吸入します。リュープリンやゾラデックスは皮下注射で約4週間効果があります。
Gn―RHアンタゴニストの商品名にはセトロタイド・ガニレストがあります。いずれも皮下注射で、24時間〜5日間天然のGn―RHの下垂体への命令をブロックします。それによってLHサージを抑えるので、近年の体外受精・胚移植にはよく用いられています。Gn―RHアゴニストとの違いは脳下垂体への最初の刺激が無く、直ちにGn―RHの下垂体への命令をブロックする点です。