子宮内膜症について

子宮内膜症の薬物療法はどのように行うのですか?

GnRHアゴニスト(スプレキュア・ナサニール・リュープリン・ゾラデックス)やダナゾールと呼ばれる薬を4~6ヶ月使用し、月経と排卵を抑えて子宮内膜細胞を委縮させます。GnRHアナログは脳下垂体に作用し、視床下部から分泌されるGnRHに対する感受性を低下させることにより、脳下垂体からのFSHやLHを抑えて卵胞の発育や排卵を止めるものです。副作用としては、更年期障害様の症状(のぼせ・動悸・肩こり・頭痛など)が現れることがあります。

ダナゾールは経口剤ですが男性ホルモンの親戚で、GnRHの放出抑制、卵巣の性ステロイドの産生抑制、性ステロイドの代謝促進、子宮内膜への直接委縮作用があります。副作用としては体重増加・肝機能異常・血液濃縮による血栓症・悪心・血性の腟分泌物・脱毛・吹き出物・のぼせ・声がかすれるなどがあります。副作用の頻度はGnRHアゴニストより多いようです。近年は低用量ピル、ディナゲスト(黄体ホルモン剤)、ミレーナ(黄体ホルモン剤を添付した子宮内避妊具)なども保険適用となりましたので、症例によって使い分けています。

子宮内膜症の治療はどのように行うのですか?

病状の程度により治療法を選択します。第1期、第2期ではまず薬物療法を考えますが、それ以上になると薬物療法プラス手術(開腹術、腹腔鏡下での癒着剥離)を考えます。卵管采が正常と思われる4.0cm以下のチョコレート嚢腫の場合は、経膣超音波ガイド下の穿刺・吸引・アルコール固定を行います。

子宮内膜症になるとどうして不妊になるのですか?

子宮内膜症の昔からの分類でBeechm分類というものがあります。第1期(微小病変)、第2期(軽症)、第3期(中等症)、第4期(重症)の大きく4期に分けられています。病状が進むに従い、卵管と卵巣、腸管がお互いに癒着するようになり、卵巣からの卵子の放出や卵管采からの卵子の取り込み、卵管内の受精卵の移動などが妨げられるようになります。

どうして子宮内膜症になるのですか?

原因はまだよくわかっていません。なぜ子宮内膜組織が正規の場所から離れた組織に存在するのか不思議なことです。

70年ほど前、子宮内膜症は月経血の逆流によって起こるということが示唆されました。女性は通常の月経時、月経血と子宮内膜細胞の一部は卵管を通って腹腔内にも流れ込みます。子宮内膜症の女性では、この子宮内膜細胞が子宮の外に生着してしまうのです。実際、月経期の女性の腹水から採った子宮内膜組織は培養して増殖させることができます。また、子宮内膜症はリンパや血液の流れに乗って子宮内膜組織が運ばれることにより、離れた組織でも発生するのではないかとも考えられています。卵巣のチョコレート嚢腫もこのリンパ行性の播種により説明することができます。

もうひとつの説として、子宮内膜症は体腔上皮が子宮内膜組織に化生することによっても起こるというものがあります。簡単にいえば、普通のからだの細胞が子宮内膜細胞に似たような細胞に変化するということです。実際に、子宮内膜症は初潮前の小児に見られることがありますし、またエストロゲンの大量投与を受けた男性にも見られることがあります。

子宮内膜症とはどのような病気ですか?

子宮内膜は卵巣からのホルモンの影響で肥厚しますが、妊娠しないと剥離し月経となって体外へ排出されます。この子宮内膜が正規の子宮内腔になく、骨盤の腹膜や子宮筋層内・卵巣などの中に入り込んでいる場合を子宮内膜症と呼びます。月経となっても組織の中に出血するため月経痛が強く、性交痛を訴える方もいます。一般の方には5~10%の頻度で見られるのに対し、不妊症では20~30%に見られ、不妊の原因のひとつと考えられています。